斜陽産業からの脱出(4)~シチリアが大好きだった同僚の場合~

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少し間が空いてしまったが、斜陽産業から脱出に成功した友人・知人たちを取り上げるシリーズの4回目として、映画ゴッドファーザーが好きすぎる元同僚のK君のことを書いてみたい。1回目の「大手スーパー社員の場合」はこちら。2回目の「女装コンテスト優勝経験を持つ銀行員の場合」はこちら。3回目の「転勤が多かった新聞記者の場合」はこちら

K君はいつもスーツをびしっと着て、携帯の待ち受け音楽はもちろん「ゴッドファーザー 愛のテーマ」。イタリアンマフィアに心底あこがれており、「シチリア島に転勤したい」とか言っていた(もちろん私たちの働く会社は、シチリア島に拠点を持っていない)。

そんなK君は、同期の中で最も早く本社勤務となった。若いころから優秀との評判が高く、本社でも希望の部署に配属となった。そのままトントン拍子で出世していくのかと誰もが思っていたが、ある時、結婚と退職を同時に発表した。私はその話を 斜陽産業からの脱出その1~大手スーパー社員の場合~ で紹介したNさんが経営するバーで打ち明けられた。

彼の転職先はある地方自治体だった。東京での社会人経験を生かして、企業誘致や観光促進をやるという話だった。ところが、わずか1年余りでその地方自治体を退職。奥さんの実家が経営する小さな会社(製造業)に転じた。後日、再会した際、「なんで地方自治体を挟んだの?」と聞いたところ、最初は口を濁していたが、しばらくして少しだけ話してくれた。どうやらその地方自治体は彼の実家に近く、自分の実家が抱えていたトラブルを処理してから、奥さんの実家近くに行くことにしたのだという。

彼の経験と能力に期待して採用した地方自治体にとっては、だまされた気分だろう。だが、そうやって軽やかに仕事を転々と変えられる彼の行動力に、私は感服した。先行きが見通せない今の時代、地方自治体で働きたい人はたくさんいる。就職するには、相当の競争率の中を勝ち抜かなくてはいけない。面接でなんと言ったのか、チャンスがあったら聞いてみたい。

K君は、奥さんの出身地である地方都市で、地域活性化に取り組んでいるようだ。彼が生まれ育った街ではないけれど、東京で社会人生活を送ったことのある人間が少ないその都市では、東京の感覚を持つ貴重な人材として、重宝されているらしい。

なお、K君は奥さんと、ある年の12月30日だか31日だかに、仕事の打ち合わせで知り合ったという。年の瀬なのに働かなければいけない境遇を2人で嘆き合った後、年明けに新年会をする約束を取り付け、そこから交際・結婚に発展したのだそうだ。そんなこともあるんですね~。

K君は、人生には何が起こるか分からないということを、身をもって証明してくれた。彼がいま働く会社の業績については、怖くて聞いてない。斜陽産業からの脱出は果たしたものの、もしかしたら、もっと苦しい道を歩んでいるのかもしれない。小さな会社なら、自分の裁量・努力・アイデア次第で局面を打開できることもある反面、大きな会社で働く者には決して分からない悩みもあると思う。K君の成功を、心から願っている。

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